製造業では、CADデータや製品検査記録、製造時の画像データなど、法的要件や品質保証の観点から長期保存が必要なデータが年々増加しています。特に半導体や精密機器メーカーでは、10年以上の保存義務があるケースも多く、データ容量の肥大化と保存コストの課題が深刻化しています。
今回の事例では、ある工業メーカーが長年蓄積されたコールドデータをLTO(Linear Tape-Open)で安全に保管するアーカイブ体制を構築。「消せない・捨てられない」データを効率的に管理する運用を実現しました。
- 課題
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増え続ける長期保存必須データによるストレージ容量逼迫と運用負荷の増大
製造業特有の課題として、以下のようなデータが継続的に蓄積されていました。
設計・開発データ:CADファイル、試作品情報、設計変更履歴
品質管理データ:製造時の画像データ、検査記録、出荷前検査結果
法的保存データ:監査対応、トレーサビリティ確保のための各種記録これらのデータは「いつ使うかわからないが、消去することはできない」性質を持ち、ストレージ容量を圧迫していました。単純にストレージを増設する選択肢もありましたが、リプレイス時のデータ移行作業や運用負荷が課題となっていました。
- 解決策
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LTOによるアーカイブ体制の構築
課題解決のため、LTOコールドアーカイブを導入しました。まず既存ストレージとコールドストレージシステムを接続し、アーカイブ対象として指定されたファイルが移動される仕組みを整備。重要なのは、単なるバックアップではなくデータを移動させることで、既存ストレージ容量の空きを確保する点でした。
導入にあたっては、まずPoC(概念実証)を実施しました。特にデータへのアクセス権については慎重な設計が必要でした。ファイルの移動・削除を行うため最上位の権限が必要となり、情報システム部門との綿密な調整を実施。お客様のデータに直接触れることができないため、お客様と協働でテストを進め、運用手順書の整備と併せ導入を実現しました。
- 導入効果
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容量問題の解決と将来への備え
導入により、既存ストレージに空きを確保。さらに、システムリプレイス時に発生する膨大なデータ移行作業も、今後はテープ交換で完了するようになりました(テープ装置の更新時にはデータ移行が必要となりますが、テープ装置の製品寿命は10年程度と長期にわたります)。
セキュリティ面では、ランサムウェア対策として物理的分離を実現できた点が大きな効果となっています。書き込みが完了したデータを改ざんできないようにするWORM技術の利用や、テープを筐体から取り出してネットワークから完全に遮断できるため、強固なセキュリティ対策を実現できます。また、他社事例では3PB以上のデータ保存実績もあり、将来的なデータ増加や法的要件変更にも柔軟に対応できる拡張性を確保しています。
- まとめ
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製造業では避けられない長期データ保存要件。プラナスソリューションズでは、LTOを用いたコールドアーカイブの構築から、既存システムとの連携設計、段階的な移行支援まで、お客様の運用実態に合わせた最適なソリューションをご提案いたします。
100TB以上のデータ保存にお困りの皆様、まずはお気軽にご相談ください。